こんなこと書いてどーなのか。
自分自身でもしんどいけど。
北風、渋谷の街。
夜のとばりが降りた曲がり角で、だし抜けにホームレスと鉢合わせになった。
お互いに少し避ければ衝突はないのだ。
ふためと見れないほど汚れた毛布と紙袋を抱えて、ボロと肌の区別ない様子は、病人でも狂人なく、他ならぬなにものとも受け取れない。
しかし逆に病人でも狂人にでもなりうる風体でもあろうか。
そんなホームレスにとって、目の前の人間はまるで浮き世の夢。
オレの存在なんてこの世に居ないかのごとく。
そして涼しげに突き抜けようとする。
しかし大げさに飛んでおののく事はせず、相手の自尊心と人間性を認める上でオレは自分の領域だけを避けたのだったが。
それがいけなかった。
彼はオレの身体にすべての不満と呪いをこすりつけて、高慢なくらいに胸を張りながらぶつかり過ぎて行った。
オレにはそれが永遠のように感じられたし、あたまに血が上り目の前が暗くなるほど怒りがこみあげたが、振り向こうともせず役者が花道を帰るかのごとく消え
ていくホームレスの後ろ姿を見ているうちに、頭のなかはさーっと冷やされてショートした思考カイロもなんとか繋がって落ち着く事ができた。
その風体ゆえ、長年の間、あまりにも皆から避けられ、おののかれ、忌み嫌われた結果、自分から退かずとも雑踏を苦もなく歩ける事が彼の常識になっているのだろうか。
ただただ塩の結晶のように凝り固まった心のなせる事なのか。
計り知れない。
そりゃ不愉快なことはなはだしい。
が、なにか教訓めいた事を教えてくれたような気もする。
雑踏の虚にふっと現れた妖精の種族だったような気もする。
世の中の意識も法律も彼には、すなわちくそ食らえの鼻息。
滅ぶべきこの世を生きる渋谷の若者達の今日、という時間なんて間抜けな破れ穴。
星も無い空の下で。
世の中が崩壊してもホームレスなんてなれないだろうし、渋谷の若者にももちろんなれやしない。
リュウスケ
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